夏目友人帳11巻感想です。
心を持っていかれる、素敵な一冊でした。
以下の感想はネタバレにもなりますので、ご注意ください。
四十二話・四十三話 タキの家に封じられていたものは?
四十二話と四十三話は、タキのお家でのお話です。
夏目・田沼・タキ。三人でのお話なので、うれしい。
タキの家で蔵掃除
夏目と田沼が偶然たどりついた立派なお屋敷は、タキの家。
門構えがあって、嫌な予感がする夏目がおもしろい。
なぜかニャンコ先生もいる。夏目の雷に怯える姿を見ようとしてタキにつかまったって・・・(笑)
さすがのニャンコ先生もタキにはかなわないなぁ。
ニャンコ先生が食べている羊羹、大きい!
こんなに甘いもの、全部食べたのかな。
妖を研究していたというタキの祖父の蔵掃除をすることになった三人。
手伝ってもらうことになったタキがうれしそうなのがかわいい。
夏目も田沼も優しいです。
蔵に潜む妖がけっこうこわい
蔵にいた着物のオバケ「カクラ」がすごく不気味です。
散り散りになった体を探して、すべて探し終えると仕返しをしてくるかもしれない。
何としても阻止しないといけないですが、体を探しまわる妖にぞぞっとします。
特に、夏目が床下にあった右足を取ろうとした時に、奥から出てきた手。
ぞっとしました。こわい。
そして、容赦なく夏目を攻撃してくる所も背すじが寒くなります。
蔵にいたタキの祖父を知る妖たちは、素直じゃないながらもタキの祖父との思い出を大事にしていて、心温まりました。
夏目への理解
妖が見えることを誰も理解してくれなかった過去を持つ夏目。
田沼とタキが夏目のことを分かろうとしている描写がたびたびあって、うれしくなりました。
危険に巻き込みたくないと遠慮し合っていましたが、今回の蔵の件で三人の距離がぐっと近づいた気がします。
今回、タキの言葉がすごく良かったです。
見えるというのは出会ってしまうということ。
出会うという言葉をタキが使ったのに、じんとしました。
やっかいな妖もいるけれど、事情を持ちながらも人と変わらない優しさを持った妖もいる。
今までの妖との遭遇を出会いとして受け止めてくれる。
夏目は、いい友達とめぐり会えてよかったなぁとしみじみ思いました。
四十四話~四十六話 夏目の実家へ
この四十四話から四十六話は涙なしでは読めませんでした。
夏目の思いにぎゅっと心をつかまれる、三話でした。
切ないお話でしたが、ニャンコ先生の歯磨きシーンがあって、「あ、ちゃんと歯磨きするんだ」と笑ってしまいました。(こういうところが夏目友人帳の良いところ!)
夏目の実家が売りに出される
両親との思い出がつまった夏目の実家が売りに出されることに。
結構、衝撃的なことですが、思い出すと辛くなるから、もういい。という夏目。
でも、両親の写真をじっと見ているところをみると、まだ気持ちの整理がつかないんだなと胸がしめつけられました。
夏目の両親、どちらもきれいな人です。きっと優しい人だったんだろうなぁ。
友人たちの言葉に気持ちを動かされ、実家を見にいくことに。
快く「行ってらっしゃい」を言える塔子さんと滋さんは、本当にいい人です。
きっと内心は気になってしょうがないだろうし、心配もあるのでしょうが・・・
夏目の過去
昔、引き取ってもらっていた家に、実家の鍵を受け取りに行きます。
しかし、そこには妖が。
この妖が原因で、この家族ともうまくいかなかったのかもしれませんが、それを差し引いても、夏目と同い年の三世子とうまくやるのは難しかったのかもしれません。
親を取られたくない。親に迷惑をかける夏目が許せない。
三世子の小学生ならではの気持ちがよくあらわれてるなと思いました。
「出て行け」と言われ、自分の本当の家へと走り出す夏目のシーンは、こちらまで胸が苦しくなります。
まだ幼い夏目にとって、「出て行け」という言葉がどれだけ重く辛いものだったか。
自分がいてもいい場所。自分を受け入れてくれる場所。
子どもにとってその場所がどれだけ大事か、考えさせられるシーンでした。
最後に、ニャンコ先生とともに実家を訪れる夏目。
けっこう目立つところに描かれた落書きの絵も、そのままにしていてくれたところに、夏目の父の優しさを感じます。
断片的に父との思い出を思い出す夏目。
ふれたくない過去の中にも、大事な思い出がつまっている。
ちゃんと実家とお別れすることは、夏目にとってとても大事なことだったのかもしれません。
塔子さんと滋さんの待つ家へ「ただいま」と帰る夏目に、心の底から良かったと思いました。
夏目友人帳11巻は、夏目の過去や心に深く潜れる、切なくも優しいお話でした。