29巻最初のお話は、28巻から続く年下のいとこの後半です。
28巻の感想はこちら↓

表紙はじっくり見たくなるほど意味深です。
29巻は後々につながるお話や、レイコさんに絡んだお話もあって、読みごたえたっぷり。
以下、29巻年下のいとこの簡単な個人的感想になります。
未読の方、内容を知りたくない方はご注意ください。
名前の偶然
名取さんの心の奥底に眠っていた美弦という名前。
偶然にも、祓いに来た妖も同じ読みである名で、一瞬の心の動きにつけこまれてしまった名取さん。
ミツルという名。
いくつかの漢字のミツルが登場しましたが、
どのミツルであっても名取さんを翻弄する存在だったかもしれない。と、何となく悲しくなりました。
存在することが叶わなかった名取家のミツル。
名取家の深い闇を見たような重ぐるしい気持ちになり、しんしんと降り続く雪の冷たさが余計に心にしみます。
妖の恋
今回の妖、深蔓の名取さんへの気持ち。
自分を探しに来た名取さんを毎夜見つめていたり、「恋しい方」という表現をしたり。
普通に読んでいると、恋をした乙女。
ただ、やっぱり妖。
人間と同じ恋愛はできないかもと思ったりしました。
花の香でごまかした、こびりついた血のにおい。
からみついて喰らいつくすのが真の性だと自ら言う深蔓。
もし、名取さんの心が我が物となったら、いずれ食らうことになっていたのかも・・・しれません。
それでも、深蔓の名取さんを想う気持ちが一途でせつなく、
祓われる前に「生涯をかけてたたかうもの」と言われた後の深蔓の表情が何とも言えません。
妖の恋というのは、純粋でもあり、危うくもあり、時にはぞっとするものだなと思いました。
式たちの思い
柊の言葉がとても胸をうちました。
式という役回り。
式になれば、ずっと名取さんのそばにいられるし、つくせる。
深蔓がそれを望まなかったのは、やはり名取さんの特別な存在になりたかったからでしょうか。
深蔓は式たちのことを「報われない」と言っていますが、柊はその言葉に揺るぐことなく、ちゃんと自分の信念を持って名取さんに仕えている。
そんな真っすぐな所が柊の好きな所です。
28巻で、笹後が夏目に頼らずとも、自分たちで救えたのにと言っていましたが、瓜姫がそれには思うところがあるようで。
瓜姫も夏目のことを一目置くようになって、変化を感じました。
最後の花
すべてが終わった後、夏目が落ちていた花を取り、名取さんの背中に声をかけようとしてやめます。
夏目は何を言おうとしたのだろうと気になりました。
年下のいとこは、いろんな意味でとれるものがたくさんあって、何回も読みました。
読むたびに「あ、ここはそういうことだったのか」とか、「あれ?もしかして自分が思ってたことじゃなくて・・・」とか、たくさんの発見があっておもしろかったです。
最後に名取さんの首元にある印にニャンコ先生が気が付きますが、どう意味があるのか初見では分かりませんでした。
雪のように飛んでいるたくさんの紙人形。
結界内では紙はとても強く、簡単に切れると言う深蔓。
ただの保険だと印を消す名取さん。
気が付いて、ぞっとしました。
なんて印を書いてるんだ!!
夏目とニャンコ先生が来て、本当によかったです。
「年下のいとこ」のお話は、とても深くていろんな解釈ができるので、読むたびにいろんな気持ちになれます。
何度も読み返したくなるお話の一つです。

